VOID
」のレビュー

VOID

座裏屋蘭丸

素晴らし過ぎて、もはや芸術。

ネタバレ
2021年10月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 座裏屋先生の美しいエロスと、深みのあるストーリーが興味深く全作品制覇を目指してます。フリマアプリでは、とんでもない価格で売り出されてるこの作品。台湾版やフランス版など海外版も出版されていて、それほどの貴重な作品に期待値も上がるというものです。内容に関しては、一冊の中にまとめて凝縮してしまうならば、売りのエロスを削っても、心情部分を広げて欲しい気もします。いい意味で詰め込みがもったいないように思います。素晴らしいのは事実だと念押しいたします。
そもそものヒューマロイドやアンドロイドに、人間と同じ感情を持って恋愛に至るのか?組み込まれた記憶や感情を越える事があるのか、とそこでぶつかると進めないので、そういうものだと自分の意識を変えるしかないかなと思うようにしています。
実在する人間の記憶を組み込まれたアラタ。主人公マキの心に棲みつく過去の恋人レンに似たアラタを虐げるように弄ぶのは、復讐のつもりなのか…
アラタに刷り込み処理が行われ、セクサロイドとしてされるがままのアラタが辛い。健気にも尽くそうとするアラタと過去に囚われて身動き出来ないマキ。各コンテンツにある鳥籠の絵。扉の開いた空っぽの籠に鳥が入り、扉は閉められない。留まるも逃げ出すも自由。そして飛び立った後の空っぽの籠。これはアラタの事を表しているのでしょうか。こういう所もさすが座裏屋先生だなと感心しました。アラタの扱いを酷い仕打ちで始まった関係が、いつの間にかレンではなくアラタ自身を見ているのがジンと来ます。刷り込みの解除を行った時の『VOID』。鳥の籠の中のアラタを自由にする事と、レンに囚われていた自身を解き放つ事が『VOID』なのかと思うと、感嘆しかありませんでした。そして、二人で作りあげた木の巣箱には鳥が入っていて拍手喝采です。上手い!これはお見事です!素晴らしい~。初めてマキと対面した時のアラタの言葉が、レンの記憶からくるものであるならば、あの時点でマキが呪縛から解放される『VOID』の言葉なのかと思うと、これもまた深いなと、勝手に推測しています。
刷り込み解除を終えて、時間をあけての再会も真摯な思いに感動です。素直に、ヒューマロイドもアンドロイドも感情を持って恋が出来るんだと思えるような素敵な作品がでした。欲を言えば、もっと数巻で深めて欲しかったです。とにもかくにも素晴らしいって事です。
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