学園天国 それは恋です小泉くん
」のレビュー

学園天国 それは恋です小泉くん

秀良子

人とは多面的な生き物

ネタバレ
2021年10月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ ストーリーを読むうえでこちらがなんとなく抱いてしまう先入観を、いつも軽やかにぶち壊して、さらに上の世界を見せてくれるのが秀良子作品の凄いところ。

みんなのアイドル小泉くんが猫被りの性悪だという事実、それを上手に隠す計算高さや、柏原くんを追い込んでいく下衆な顔、そこまではなんとなく心構えできてる。その先!その先の小泉くんの変貌に本当の面白さがある。
小泉くんがC子と過ごす素に近い姿や過去エピソードなどが紡ぎ合わされ、小泉くんの様々な顔が出てくる。そうして小泉くんを360度照らしていくと、小泉くんの芯のようなものが浮かび上がってくる。小泉くんを形造る、先天的なもの、後天的なもの…。
人の性格や行動とは多面的で矛盾を孕んだものです。
計算高い性悪でも恋をしたら馬鹿になっちゃうのです。
2巻では柏原くんと晴れて両思いになり、生き生きとしている小泉くんがさらに新しい顔を見せてくれます。オスの顔とか…。
人の多面性の前には、受け攻め固定なんかに拘ることすら意味のないことなのかもしれません。

1巻の方に収録されている短編「ロングバケーション」が素晴らしい傑作で、22ページの中に、究極まで削ぎ落とした少ないエピソードで、友人同士の2人の14年間を描き切っています。アナザーワールドを生きている日高(STAYGOLD)を見たような錯覚をおこし、涙腺がヤバいです。
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