COCOON
」のレビュー

COCOON

今日マチ子

飛べない蚕

ネタバレ
2021年10月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み放題。
今日マチ子先生による、戦争三部作の1つ。

柔らかく叙情的な作風で、ここまでグサリと現実を突きつけられるとは予想外でした。
逆にこの柔らかさがあるから、最後までこちらも逃げずに読み切れたのかもしれません。

少女たちは自らを守る為に繭を作る。しかし繭から出た蚕は飛べない。だから自らの足で歩んでいく。
どこか亡くなった友たちを切り捨てている様にさえ思えたのですが、しかし感傷に浸る事よりも、振り返らず自らの足で進んで行く強さが無ければ、あの時代から前には進めなかったのではないかとも思います。
必死に生き抜いてくれた世代のお陰で私達が存在できる。そう思います。

本編で私は掴みきれなかったのですが、あとがきでマユの基となるエピソードを知り、そういうことだったのか…と何とも言えない切なさで胸が一杯になりました。

あとがきでマチ子先生は、戦争については人それぞれ考え方があるけれど、描くことを通して根源的なものに触れたいという思いを綴られていました。
教訓めいていないのに、ここまで深く揺さぶることができる本作には、もはや先生の仰っている根源的なものが沢山詰まっていると感じました。

戦争を知らない我々が、読まねばならない作品の1つだと思います。
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