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一ノ瀬ゆま

「再び生まれてきてくれてありがとう」

ネタバレ
2021年10月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★ボクシングジムのトレーナー・宥とジムに入会した勁の信愛ストーリー。

★宥は路地裏で出会った勁の身体能力の高さを目の当たりにし、ワケありに見える勁をジムに誘う。数日後、入会希望者としてやってきた勁を宥は歓迎するが、勁の目的はボクシングではなく寮だった。ボクシングに真剣に取り組んでほしい宥と適当にしたい勁は衝突し、勁はゲイである宥を脅迫し犯す。セ ックスを重ね、キスをするようになり、今までに感じたことがない感覚を抱き始める勁と、勁への気持ちの変化に気付き始める宥。謎めいた勁のバックグラウンド、惹かれ合い求め合う2人を引き裂く人々、目まぐるしく変わる2人を取り巻く世界。彼らは一体どこへ向かい、どこへ辿り着くのか…。

★2巻で勁の兄・梏が登場してからの展開は、戸惑わない人はいないのではないかと思うくらい劇的ですが、梏に焦点が当てられた理由が3巻で分かると、梏の心の叫びが胸に刺さります。梏は罰を求めながら、きっと許されたくて、崔はそれを与える人なのだと思いました。2巻の重さと深さを得てからの3巻は、目を見張り、息を呑みました。文字通り、勁が泣き、叫ぶ姿は、まさしく白い獣が再び生まれ落ちた瞬間のようで、「感動」では片付けられない胸の震えを感じました。そして、生まれ直した勁の露わになる感情、かゆくてたまらない姿に、全ドーパミンが放出されました。「しあわせ」…彼らからの贈り物をしっかりと胸に受け取りました。

★3冊全て250ページ超えの大作で、勁の内面描写が心に喰い込んできます。シリアスさと甘さのバランスは3:1という印象ですが、セ ックス描写は濃厚で、とても満足しています。ボクシングという設定もしっかり生かされていて、ボクサーとトレーナーという関係性、恋人として寄り添う愛情、ゲイの自分への保身と覚悟含めて、宥を通してしっかりと描かれています。

★『神様なんか信じない僕らのエデン』のあとがきにも書かれていましたが、願いを込めて自分の子ども(キャラ)に名前を付ける作者様だなと、名前の意味を知って感動しています。
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