スメルズ ライク グリーン スピリット SIDE-A
」のレビュー

スメルズ ライク グリーン スピリット SIDE-A

永井三郎

間違いなく忘れられない一冊となる

ネタバレ
2021年12月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ ここ数日この作品のことを考えている。
LGBTについて描いてはいるんだけど、そこに「田舎」と「中学生」という要素が、これでもかと息苦しくのしかかってくる。町の人みんな顔見知りで、おいそれと家出なんか出来そうもない山深い田舎の閉塞感。与えられた環境で生きるしかない中学生という無力な年齢。自分に馴染みのある中国地方のどこかを思い浮かべて読んだ。私も、生い茂った山の斜面には間違いなく死体がゴロゴロしてると思っている。

いじめ描写もあるが、三島の表情が常に澄んだ強さを放っていて、暗さがない。素晴らしい邂逅があり、屋上でのシーンは、人生において忘れられない時間となることが予感できる。ここで、スタンドバイミーを彷彿とさせる表紙が思い浮かぶ。屋上の2人が、胸の内を語り合ったゴーディとクリスに重なる。

男の子達に巻き込まれて性指向拗らせちゃった女子、藤井さんも印象深い。思春期になにを体験するかって、大きい。藤井さん結構好き。

コメディも上手いが、悪意の表現がとても良い。漫画でしか描けない表現。不穏な悪意に侵食されつつSIDE-Bに続く。視点を変えるとか主役が替わるとかではなく、ストーリーとして続きものです。
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