罫線上のカンタータ【電子限定描き下ろし付き】
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罫線上のカンタータ【電子限定描き下ろし付き】

早寝電灯

想いよ届け。

ネタバレ
2021年12月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ さすがの早寝電灯先生です。思っていたよりも、レビュー数が少ない事に驚きましたが、個人的には見事な構成力に、スタンディングオベーションものです。
2組のCPが交互に描かれて、世界観が繋がったオムニバスです。共通するキーワードは『手紙』です。2組は漫画を通して繋がってはいますが、直接出会う事はなく、その繋がりがなんだか素敵です。
どちらも受け目線と攻め目線で交互に描かれているのも、互いの心情の重なりや、すれ違いが分かりやすくて、ホントに素晴らしい一冊です。
一組目は、学生でありながら漫画家の葉治と、大学の先輩である爽人の物語。爽人には、人に言えない秘密がある。好きだから知りたい葉治。好きだからこそ、無理に聞いてはいけない。勝手にウワサして、聞きづらいから聞かない第三者とは違う葉治の思いやりがいい。爽人の怯えを敏感に感じ取り、ただ心を寄り添わせているのが素敵でした。爽人のトラウマとなる未開封の手紙。母の思いを受け取れなかった後悔は哀しいけれど、二度と後悔をしないために、勇気を振り絞って葉治に送ったファンレターという名のラブレターがいいですよね。想いを受け止め、想いを送る。
爽人の心に寄り添って来た葉治が、キズを含めて丸ごと全部包み込む愛に溢れていました。感涙です。
2組目は、BL漫画の二次創作の小説家・港と作画をするスオ。SNSを通じて知り合った二人。これもまた、言葉と言葉の送り合いであり、心と心の送り合うファンレター。父親に自分を否定される事は哀しい事ではあるけれど、自分の作品を『宝物』と言ってくれたスオの言葉に、港はどれだけ救われた事でしょう。自分を認めてくれるスオが愛おしいに違いない。
出会う前から、作品に恋するように互いに恋していたように思える二人で、とても素敵でした。

この作品内に描かれていた『岸辺の手紙』。この作品をちゃんと全部描いて欲しいくらい、感動でした。時間を越えたラブレター。ちゃんと想いが届いて良かった。作中作品の余韻が一番残りました。
素敵な物語をありがとうございました。
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