午前2時まで君のもの
」のレビュー

午前2時まで君のもの

奥田枠

もう一捻り欲しい気がしてしまう

ネタバレ
2022年1月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 奥田先生の作品、基本的には好きで本作も発売早々に購入して読んだものの、ミチの幼さと、一日毎に記憶がリセットされるのに、元の記憶にない灯さんとの結婚はミチの負担になることは明らかなのにした理由が説得的に描かれていないことに違和感が残り感想がまとまらなくなってしまいました。また下巻にあるミチがその日に初めて会った人=灯と寝れないと思うことは人間として健全だけど、それはいくら21歳までの記憶しか残っていなくても結婚前から分かっていたことじゃないのかな。そう思うと、本作のテーマは誰も悪くない中での切なさにあるように思ったものの、本当に誰も悪くないのだろうか、というモヤモヤが残って。
調べるとミチの前向性健忘は、交通事故などで起きる高次脳機能障害の一症状として起きると解説してあって、それなら人格の低下で幼くなることもあるのだそう。もしも、ミチが事故の結果、記憶障害以外に人格や判断力に変化があったのだという医学的所見が誰かの回想で入ってたら、ミチが置かれた状況が客観的に分かり、読み手もなるほどと思えたのかもしれない。
また、記憶障害が発症した後に知り合った相手との結婚についてもリスクについての意見を聞くなりして、それでも結婚しようと決意したシーン(例えば、記憶障害が改善する可能性が残っていて、それに期待したとか)があれば、結婚した理由にも、もう少し説得的が出たのではないかしら、と思ってしまう。
奥田先生の絵や、セリフに余白があるところは好きなのです。できたら、多くの人が、引っ掛かることなく読み進められるようにしてもらえたらより良くなるのでは、と個人的に感じました。
こういうレビューを書くのはためらいましたが、次回作への期待を込めて。
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