【電子限定特典付】絡まる糸を解くように
」のレビュー

【電子限定特典付】絡まる糸を解くように

吉野ルカ

純粋な想いが解していく深く絡み合う糸の先

ネタバレ
2022年1月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ ラヴィンランドが好きだった作家様。Twitterで綺麗な表紙絵を見かけて発売を楽しみにしていました。
長い時間、世代を超えて複雑に絡まり合ってしまったそれぞれの想いが、ゆっくり解けて昇華していく過程が丁寧に描写され、読み返すほどにしっとりと胸に残る好きなお話でした。

幼い頃に亡くなった父の跡を継ぎ、仕立て屋を営む巧弥。父の友人、堂崎が公私ともに父親のようにずっと側で見守っていましたが、堂崎の息子・漣の登場により物語が動き始めます。

この巧弥が純粋を絵に描いたような青年で、堂崎を父の様に慕うひたむきさがとても可愛らしくて好きでした。
そんな巧弥の気持ちを、身体を、強引に、そして優しく暴いていく漣。
誰の手もついていない真っ新な身体がゆっくりと侵されていき、何もかもが初めての巧弥が戸惑いと不安でギュッと目を瞑りながらも快楽に抗わず欲に素直になる姿が儚げで愛しくて。想いが重なるプロセスを楽しむというよりも、重ねた肌の触れ合いから想いが育っていくお話で、この2人には合っていたと思います。

身体から関係が始まる事や、巧弥が幼い雰囲気である事もあってなんだか漣が悪い大人みたいに見えて背徳感すら感じるんですが笑、漣が巧弥の事が可愛くて仕方ないのがよくわかります。だって可愛いいもんね笑 漣との事で自分の気持ちを意識し向き合っていくその無垢で真っ直ぐな姿に、堂崎にすごく大切に守られてきたんだろうと感じます。

巧弥や漣、そして、亡き巧弥の父や堂崎が抱えてきた縺れた想いが少しづつ紐解かれ、向き合っていく過程がまた切なくて。
何を望むわけではない純粋な想いも、やはり欲には変わりなく、時には抜けない棘のような痛みを与えてしまうこともある。決して誰しも苦しませたいわけではないのに拗れてしまう痛々しい心情が繊細に綴られます。
だからこそ、書き下ろしで清々しい堂崎の笑みを見る事ができたのは嬉しかったです。

先生の描かれる色っぽくしなやかな裸体の絡みが本当に美しくて、服をはぎ取られていく様子や繋がっている時の艶っぽい表情がとても素敵。ナチュラルで綺麗な身体のラインも大好きです。巧弥の漣に対するいじらしい想いが伝わる描き下ろしや、きっと幸せな2人と家族との関係がこの先続いていくだろうと思えるそれぞれの笑顔にもほっこりして、爽やかな優しい読後感でした。また次の作品も楽しみにしています!
いいねしたユーザ18人
レビューをシェアしよう!