GATAPISHI
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GATAPISHI

新井煮干し子

ガタピシの音もやがて心地よくなる

ネタバレ
2022年2月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 二度読みました。
一度目はそのまま、二度目は『我他彼此』を調べてから。
【『我他彼此』=[自己]と[他者]、[彼(かれ)]と[此(これ)]とが対立衝突して、闘争葛藤の耐えない様子】。

仏教系の高校に通う、恥ずかしいほど真っ直ぐでアツい阿野と、自分の闇に道連れにしてやろうと企む腹黒瑞泉。
たしかに阿野と瑞泉は噛み合ってない、ガタピシ鳴りまくってますね。

この作品には仏教用語に絡めたエピソードが散りばめられています。
例えば初めての坐禅のシーン、台詞一つひとつに意味があるように感じます。

流れ星のくだり数ページは胸熱く、「俺たちはいつ死んだって大丈夫だ」からの「瑞泉が死ななくてよかった」では、2人と一緒に号泣ー!!
そして、「瑞泉を好きな理由がわからない」と言った阿野に、「もうわかった」と応えた瑞泉が思い浮かべていたのは出会いのシーン。
「お互い触りたくて、生きていたくて、それだけでいい」...そうだ、好きに理由はいらない!!

自分と他人、阿野と瑞泉、瑞泉と瑞泉父...みんな違って当然。
受け入れて認め合って自分も相手も変わっていく。
ガタピシの音も変化しだんだん心地よくなっていくんだな。
きっと度々読み返す素晴らしい作品です(語りまくってるなー自分)。

一秒一秒を大切に生きる阿野の素直な力強さ。
そんな阿野の、欲望に忠実な感じにも笑わせてもらいました。
「ベロチューでもいいか...?」
おいおい、観音様の前だぞー!!
(2018年3月/179p)
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