妄想くんのふたりあそび
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妄想くんのふたりあそび

端丘

先行する妄想と追いかけるリアルとのカノン

ネタバレ
2022年2月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ コンビニで働く27歳の昴は、理想の王子様を夢みる報われないゲイです。多感な思春期にリアルの恋を叶えたくて傷付いた昴は、漫画やドラマに出てくるような王子様の妄想で満たされていました。ある日、昴の理想そのままの男性が来店します。僕の月9が始まると狂喜する昴は、その王子の背景や自分とのときめきシーンを思い描き、宅配伝票から自宅を突き止めて、こっそり見ていたりします。愛犬になるにはどうしたら良いか相談したり、良い印象作りの為に69万円のスーツを買ったり、あっという間に売り払ったり、妄想力に負けぬ行動力を見せます。やがて昴は、高確率で玉砕するだろう恋の成就よりも、片想いでもリアルな恋ができている現状維持を選ぶのでした。王子の家の向かいに引越し、見守りながら妄想日記をつけること5ヶ月、昴は店に現れた王子のリアルを知ることになります。前半は、ほぼ昴の妄想による会話とモノローグで進行しますが、それだけに後半のリアルの会話や行動による昴の感情の変化が胸アツでした。『春の導火線』は、昴の甥•春と、春の弟の塾講師•小川喜三緒のお話。小川先生のモノローグで進行しますが、最後に行動がモノローグを大きくうっちゃります。
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