はるのうららの
」のレビュー

はるのうららの

三崎汐

「普通」って……。隠れた(?)名作ですね。

ネタバレ
2022年3月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ ★小学6年生の春に出会った春希と春介の「普通」に翻弄される子どもから大人への成長物語。(3/31までセールですよ)

★担任から転校生・春介のことを任された春希は張り切っていたが、クラスメイトからハブられている春希は春介に声をかけられず、一人ぼっちで橋の上から川をのぞき込んでいた…。

★表紙からはまったく物語の方向性を想像できなかったことを思い出します。完全にレビューのおかげで購入に至った作品です。(感謝です)何と言いましょうか…、一言で言うと「驚き」でした。思いがけない揺さぶりを受けました。閉鎖的な空間が生み出す排他的行為、大人に左右される価値観、成す術なく傷つけられる心、持て余す感情、残酷なほどに追い詰めてくる「普通」という言葉。それでも、子どもたちは、悩みながら、もがきながら、時に自分を守るために人を傷つけ、人を傷つけないために諦め、そうやってそれぞれに大人になっていくんだな、と胸に迫ってくるものがありました。すべての登場人物の内面に共鳴する部分があり、楽に読むことはできませんが、読後感は良いです。すごい作者様ですね。

★描き下ろし含めて214ページ。美山くん…君のこと、好きだよ。今村さん…あなたの気持ち、分かるよ。

★近頃「普通」という言葉が一層引っかかるようになってきたな、と感じます。人によって普通が違うなら、多様性を認めることが普通なら、「普通って何だろ」ってグルグルします。
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