鬼は笑うか
」のレビュー

鬼は笑うか

木村ヒデサト

駄目になる日を恐れて朝まで泣いた若い恋人

ネタバレ
2022年4月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 真面目な中学2年生の星谷光一は、同じクラスの柏瀬ゆたかのことが気になっています。クラスで浮いていて体育の授業もいつも見学している柏瀬の、体育教師との情事を見てしまったからです。身体も心も成長過程にある星谷が、いつも揶揄うような態度で掴み所の無い柏瀬を通して性に関することを知ってゆきます。それと同時に、柏瀬にはどうしようもない事情があるだけで、中身は自分と同じ普通の男の子であることにも気付くのでした。二人は大切な人を失い、縋るように抱き合います。3年後、高校生になった二人は変わらず一緒にいますが、恋人同士というのとはちょっと違うのでした。柏瀬は父親との関係がDVからネグレクトに変わり、中学生の頃より素直な印象ですが、独りぼっちのままです。温かい家庭に育った優しい星谷は、そんな柏瀬の家族のように傍にいてくれるのでした。それぞれの環境からなる温度差と、先の見えない思春期らしい焦りとが、切なくも愛しい恋人達を育ててゆきます。
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