百草の裏庭
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百草の裏庭

青井秋

美しい世界

2022年6月8日
夢のように美しい一冊です。
表題作5話+描き下ろしと4つの短編が入っています。

とにかく圧倒的に紙面が美しい!
ベタと点描に映える細やかな描き込み。
とりわけ草花の使い方が、少女漫画の耽美絶頂期をはるかに凌駕しているのではないかと思うほどです。
扉、目次、幕間、さらにはページ数の隣にまで細かで忠実でその草木の1番美しい顔を捉えています。
ホントに惚れ惚れと眺めまくってしまい、読み切ってみればなんと2時間半もかかっていました。
………
紙面の美しさもさることながら、ストーリーにも優しく美しい魂が溢れています。
青井先生の、個々人の思いや立つ瀬をきちんと尊重する姿勢が大好きです。
その上で彼らが優しく寄り添い、相手への敬いを忘れない関係性が絵と同様に美しくて、温かい感情が込み上がり涙ぐんでしまいます。
どのお話も好きですが、「stalks」と「浸食」が、まるで対のように呼応し響かせ合ってているようで、とても印象的でした。
お互いの間に脇として介在する植物が、実は主役だったという。
この世界でならコントロールされてもいいかな、なんて思っている時点で、既に植物に主導権を握られていますよね。。。
………
しおりのように挟まっている標本ラベルがめちゃ気に入ってしまい、学名からその植物を調べてみました。
順に、大薊(マリア薊)・カモミール・ツルヘビ苺・西洋弟切草・リコリス(カンゾウ)・匂いすみれでした。
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