夜はともだち
」のレビュー

夜はともだち

井戸ぎほう

SMを通して描く、交わらぬ両想いのお話

ネタバレ
2022年6月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者の、仄暗く寂しげな絵柄とテーマがマッチした素晴らしい作品だと思います。
そして、本作は、SMを描いているようで実は「SMに嵌まれない苦しみ(性的嗜好の不一致)」が主題であり、普段SMジャンルを理解し難く感じている人にこそ刺さるストーリーなのではないかと思いました。

プレイを器用にこなしていく真澄の人間らしさと対比して、プレイの時以外は打てども打てども響かない飛田の空虚な態度に、なんという交わらなさ…と焦燥感が高まります。「飛田くんとセ◯クスをしてた」ではなく「飛田くんの身体とセ◯クスをしてた」という表現。真澄の夢を見て髪を切ったあの日、飛田の愛は高まり、真澄はいつになく疲弊している。飛田のいう「恋人」と真澄の思う「恋人」が同じ言語とは思えないほど乖離している。5話あたりの絶望からの6話では泣いちゃいましたね。ボーナストラックの飛田の愛らしさも、この宇宙人、人間に擬態するの上手くなったな…ていう残酷さを感じた。飛田よ、真澄になんて甘美な毒を与えるのか。その先は地獄だよ。

結末の受け止め方は人それぞれだと思いますが、私はバッドエンド、と思いました。2人の性癖の違いは乗り越えられない壁で、真澄の行く末は佐久間さんでしょ。佐久間さんになりたくないから飛田を手放したのに、それなのに飛田ったら…。これは破滅へのカウントダウン。飛田はなぜ真性Sの恋人に出逢えないのか。Sじゃない人達をこんな風に沼に嵌めたらダメ、悲惨だから。宇宙人みたいで、謎めいていて、魅力的な子なんでしょうね…。

エチシーンは、SMプレイもノーマルプレイもありますが、2人の快楽が同じところに無いので、ひたすら物哀しく美しいエチシーンです。作者さんの身体の描き方好きですね。
こんな切ない心と身体の一方通行を描けるなんて、やっぱりこの作品は秀作だと思います。
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