このレビューはネタバレを含みます▼
これを読んで、木内さんのように早く自身の幕引きをしたいと言っていた友人を思い出した。暗い話なので苦手な人は読まないで欲しいが、私は父親が病気で亡くなって、目の前で命が散る瞬間を見届けました。父親が亡くなった後、多くの方が悲しんでくれたのも見届けました。私はしばらく何もしたくなくなって、3ヶ月くらい布団の上で過ごしていました。でも生きなきゃならないから、また働かなきゃと動けたからよかった。私には幼児の頃から付き合いがある友人が居た。友人は家庭環境故に理想のために努力を惜しまずプライドが高い。しかし歳の節目が近づくにつれ最期への願望を口にする機会が増えた。あまりに見過ごせないレベルだったので病院を勧めもしたし頻繁に連絡もした。段々友人との距離が遠くなり、連絡しない方がいいんだろうと、こちらから身を引きました。SOSが出てるのに、普通に生活し、いつも通りな友人がいつか突然消えてしまわないか心配しているのに、友人は私を拒絶したのだと感じるようになり、私は怖くなったのです。本音がわからなくなったから。この本を見て、鬱病を患っている木内さんが「ナカジョウくんは何も言わずに隣にいてくれるから、ナカジョウくんが良い」と言ったシーンで私は、苦しみを吐き出している友人に何も言わずに寄り添うだけでよかったんだな、と申し訳ない気持ちになった。私は父が亡くなった時の自分の気持ちも、子に先立たれた時の祖父母の憔悴具合も、命のリミットに絶望しても生きたいともがいていた父の姿も、残された家族の気持ちも全部知っているので…あの時の私は友人に寄り添わず、ただ自分の保身為に連絡していたのかもしれないと確信してしまった。友人はSNSでは表面上は変わらずパワフルだし、今どう思っているかわからない。ふと連絡をしようとしても、もう前のようには戻れないし傷付けたくないから、連絡できない。でも、木内さんとナカジョウくんは一度離れて、また住んで、家族になった。長い時間をかけて二人が、二人だけの特別な距離感が病を融解してくれるのだろうか。木内さんとナカジョウさんの二人の長い旅がずっと続いてって欲しい。二人が別つときがきても、次も家族であって欲しい。私には出来なかった世界を見せてくれてありがとう。書き下ろしは、勝手に救われた気持ちになった。作者さんも生きてこの漫画を描いてくれてありがとう。そして友人…いつまでもお元気で。