≠ ノットイコール
」のレビュー

≠ ノットイコール

池玲文

倫理観と一緒に脳も揺さぶられた

ネタバレ
2022年9月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ タイムスリップで過去に飛ばされるお話ですがものすごく考えさせられました。もちろんとても興味深く面白く読ませていただきました。さすがは池玲文先生だなぁと納得の作品です。

ガチ親子でガチ恋愛しているので地雷だと思う方も少なくないかも。ですが読まずにいるには本当に勿体ない作品です。
倫理とは?という問いかけと、幾重にも重なるパラドックスを読む醍醐味を楽しみました。

親も子も悩みに悩んでいるので非常に息苦しい展開が続きます。同時にこちらも、それは有りなのか無しなのか?自分はどこまで理解し許せるのか?という問いかけが常時頭の中で渦を巻いていました。

普通に考えると、例えば知り合いのおじさんがその息子と恋愛関係(肉体 関係)にあると知ったら冷静でいられる自信が有りません。それが本気であればあるほど理解できない気持ち悪さが増すと思います。
そんな設定で、2人の出す答えを知りたくて、しかも応援している側でヤキモキしながら見守らせる、この作家としての技量がただただ凄いのです。
………
2人の出した答えは納得の感動的エンディングでした。
ただ後書きの手前で終わってたとしたら、それはそれでかなり後を引く哲学的な作品になっただろうなと感じました。(下巻の後書きを挟む位置がコレまた憎いんです!)

そして倫理です。
それはとても大切なことですが、誰にも迷惑をかけない秘密の内でなら個人にとっての幸せを阻害してはならないと思います。
ソコを突いて騒ぎ立てるのはマスク警察に成り果てそうでダサい感じがします。
先生の後書きの「倫理観は大切だからこそ懐疑的であれ」がぶっ刺さりました。

細かく読むとセリフの意味や問いかけに対する応えがとても深くてエモい所が多く、表情や体勢や景色と相まってその度に胸が痛くなります。とても好きなシーン、とても響く言葉がたくさんありました。
後につながる伏線がキュンとしてまたソコを読み返してキュンキュンしてしまいます。
あとタイムスリップの原因は原爆に関係があるの?と匂わせています。精霊流しもあるので長崎が舞台なんですね。

修正は上巻は小さい細短冊が一本だけの大サービス、下巻は白抜き発光体。
15歳のショタ受けと40歳のオジ受けを楽しめるお得感満載なえっちでした。話の流れ的に背徳ゆえの後ろめたさは感じませんでした。
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