夜明けのリトルマーメイド【電子限定描き下ろし付き】
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夜明けのリトルマーメイド【電子限定描き下ろし付き】

上野ポテト

じわじわ染みる心地良さ

ネタバレ
2022年9月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 上野ポテト先生の新刊。独特な世界感に心惹かれ、作家さん買いしています。今度は何を見せてくれるんだろうとドキドキさせてくれる作家さん。
今作は不思議なテンポ感のある作品でした。
二人の言葉も行動も、微妙に噛み合わなくて思うようにいかないし、こうなるんでしょという方向に全然ストーリーが進まない。予想以上に時が開くし、えっそれでいいの?と心配になるくらいマコトは自主的に行動を起こさない。なのにそんな二人の長い時間を掛けた邂逅が読んでて心地良いという不思議。
一読では全てを飲み込めなくて、読み終えてすぐ二回目読みました。これは後からじわじわ染みてくるタイプの作品かなと思います。
感情の起伏が激しくなく穏やかなので、一見淡々と進んでるように見えるのですが、読み終わった後は充足感でいっぱいになりました。

二人の間には約束も何もない。ただ何度も偶然に再会するだけ。これは確かに運命なんだなって納得するくらいに。
自然に流れて二人が辿り着いた先がそこならば、それが彼らにとって一番正しい形なのだろうと思いました。
信章は感情を読むのが苦手で共感しにくいタイプだけど、マコトが無理して合わせているわけではなく、ただ一緒にいて居心地いいだけ、ただ彼に惹かれるまま想い続けてるというのがとてもいいと思います。
きっとマコトはこんなふうに、一生想いを寄せ続けていくんだろうと容易に想像できる。それはとても心温まる幸せな光景だなと思いました。
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