氷の城壁【タテヨミ】
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氷の城壁【タテヨミ】

阿賀沢紅茶

日常描写が面白い、陰気な可愛い美人の話

ネタバレ
2022年10月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 元気ない陰気な主人公というのが新鮮だった。

でも主人公が少女漫画定番の【モテない設定なのに可愛い】なのに加えて、さらに【抜群に綺麗】というハイスペックなチートキャラクター。だからやっぱりモテはじめる。

『そりゃそうだ、少女漫画というのは基本的には読者女性が主人公に自分を投影して、モテないからモテるへの変遷物語を楽しむためのものだ』と言われれば、それはわかる。普通は可愛いだけなのに、その上、綺麗なんだから、楽しさは他の普通の少女漫画以上だよね。

でも感じたのは、こゆんが「冷たい印象でいわゆる綺麗な人ではない、内面は可愛くとも、見た目は特にモテそうにない人」じゃこの話は成立しなかったのかな? いやいや出てくる男の子たちはそんな子たちでは無かったような。だからこゆんの見た目が特に可愛くも美人でもない普通の子で、この心理描写の優れた感じで描けば、まさに[氷でできた城壁]を持つ女の子の変遷物語となり、多くの人を勇気づける作品として、私は涙できたと思う。ただそんな漫画は売るの難しいけどね。

とにかく、そういう作品ではないから劇的な心に刺さる感動は少し物足りない。だから最終話を読み終えて「あ〜面白かった!」と駅に捨てられる週間少年ジャ○○のように、2回読む気が起きなかった。

でも、1年後にもう一回読んでみた。
内容がわかってるから読み疲れずゆっくり安心して読めた。こゆんの苦しみが切実にわかるようになった。

ヒロインが定番のモテない可愛い綺麗かもしれないが、記憶喪失になったりもしないし、悪役の暴力にも合わないし、一旦別れたりもしないよくある少女漫画とは全然違う新鮮な作品だった。

日常描写の天才が描く、挑戦的かつクリエイティブな作品でした。ありがとうございます。
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