スニップ,スネイル&ドッグテイル
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スニップ,スネイル&ドッグテイル

ヤマシタトモコ

オシャレ枠じゃないオシャレさ

ネタバレ
2022年11月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ こういう、映画を観てるみたいな気持ちになる作品、大好きてす。『パルプ・フィクション』くらいしか今思い浮かばないのだけど、他にもなんだったかな…物語が時系列順じゃないやつ。
普通に時系列順で描かれていても多分、ジリジリした様子を楽しめたとは思います。それならただ物語に流されて読めば良いだけで。
でもこれ、考えるんですね。読んでて。で、二人を追いかける。この時こうだからこうなる、って。
どう見てもタイプの違う二人の、「出来上がった状態」を最初に知っているので、馴れ初めを知りたくなるし、どうやって近づいたのかの部分を読みたくて手が止まらない。(でも、出だし40pほどは何度も行きつ戻りつしながら読んだ)
そして、やってくるのも途切れるのも、こういう描き方をしてあるから唐突です。細切れに記憶を辿る時、こんな感覚になることってあるな、と思うのです。

最後に時系列順の日付けが載っているもくじがあります。
あー!こういう仕掛けだったか!と唸りました。
密度。そこへ至る日々の積み重ねと、「その日」を表す密度が目で見てわかる仕掛け。
これを見て、短い物語の中で、二人と、二人に関わる人達との時間が一気に膨れ上がりました。あっさりしているようで、日付けと日付けの間を埋める時間を想像させてくれ、とても濃密な作品だな、と感服しました。
テクニカルだけど感覚的で、その計算が見えず、見せないところがオシャレなのかも。
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