果ての荒野でバカンスを
」のレビュー

果ての荒野でバカンスを

赤河左岸

この作品を忘れることはない。

ネタバレ
2022年12月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ SF的表題作含む3作品で、どれも秀作です。
表題作は、どうにも切ない気持ちに心を占められます。
この作品を、私は忘れることはないと思います。

シンが地球外の星へ独りで赴任する前、ルキアとシンは想い合うも特別な関係はなかった…おそらく互いに、将来帰還した時までそうなることを先延ばしにした、ただそれだけだろう。
でもそれが…。

最期の刻、生身のルキアは何を見、何を想いながら逝ったのだろう。
「あいつの裸なんて見たことない」… シンは生身のルキアを知ることなく、最期のルキアの魂と、自らが作り出したルキア型生体ロボットと共に生きていく。
帰る場所もない。異境の地で、たった独りで、老いていくのだろう。

読了後も、心から笑える日はもうこないという結末に、今日この刻は二度と無いこと、そして、愛する人に愛されていることの奇跡を思う。
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