イキガミとドナー 二人のイキガミ
」のレビュー

イキガミとドナー 二人のイキガミ

山中ヒコ

心に染みる

ネタバレ
2023年3月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品を観て、母と亡き父を思い出しました。
父は定年まで消防士だったので家に消防無線があって24時間何かしら聞こえてきてました。(今現在の消防士の家には無いそうです)滅茶苦茶何言ってるかわからない時もあるんですが、台風の時とかに「○○級は自宅待機」とか聞き取れた時は思わず父の顔を見ました。消防士は休日も消防士です。他エリアから応援を頼んでも難しい火災や事故があると問答無用で出勤命令が出ます。ある日、真夜中に父が突然起き、走って寝室から出ていきました。翌朝母に聞いたら「大きな火災があって出動命令が出た」と言われ、昼頃帰宅した父はびしょ濡れの煤まるけ。その姿に、おかえりくらいしか言えなかった記憶があります。

母は休日明けの父を、毎回姿が見えなくなるまで見送っていました。定年するまでの何十年、毎回見送ってました。母方の祖父は戦争で海外に飛ばされましたが無事に帰宅。でも同姓同名の方が亡くなったそうで、祖母は最初、名前だけ聞いたときに「嗚呼、死んだのか…」と思ったそうです。消防士は災害が起きれば家族なんて二の次です。出動すれば、救助者第一なので命を落とすことだって可能性は0じゃないです。だからこそ、母は毎回姿が見えなくなるまで父を見送ってたんだと思います。

鬼道と吉野たちが主人公の前作、そして滝と柴田をの今作を観て、戦争なんてクソみたいなモン、奪うだけで何も生まれないし、結局犠牲になるのは巻き込まれた人々なんだって気持ちと、何も出来ずただ祈って送り出すしかできない残された者の虚しさ、悲しさ、そして帰ってきてくれたときの安心感、安堵…それを一気に感じ、父母を思い出しました。

春人が亡くなった時のシーン、本当に衝撃でした。漫画、うめぇなぁ先生…ご飯作る前に見てましたが、ご飯作らなかったら多分、呆然としてた。帰ってきてくれる、帰ってこないだろうと思っていても、本当に?帰ってこない?なんで?何もしてあげてない、何も言えてない、何も返せてない。未練が残る別れは本当に本当に苦しい。ずっと何年経っても今のように思い出せるよね。別れは無情でも残された者は生きるしかないし生きるための動力が怒りだとしても、その怒りで柴田は大勢を救ったんだなと、心を打たれました。

滝と春人、仲良しで笑っちゃったけど2人組のイキガミと恋人達や、他のイキガミ、ドナーが幸せに暮らせる世になっていくことを切に願います。
いいねしたユーザ31人
レビューをシェアしよう!