夏雪ランデブー
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夏雪ランデブー

河内遙

人も草木花も

ネタバレ
2023年3月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ コーラスもフラワーズも、女性マンガの雑誌だけど、くらもち先生や萩尾先生の作品は少女マンガの延長で読んでいるため、自分は女性マンガというものを本当には知らない気がする。特にFEEL YOUNGは近寄りがたい女性っぽさがあって、読む機会を逃し続けてきた。
祥伝社セールを待ち望む中見かけた、素敵な表紙のこの作品、店頭にあったらジャケ買いです。1巻無料で読んだ後、これは全部読まなければ、と思った。作品は10年以上も前に発表されたもの。アニメ化もされていたそうだけど、全く存じ上げませんでした。その頃自分は何を読んでいたのだろう。青年マンガが多かったかもしれない。でも、こんな女性マンガを知っていたら、今選ぶ本も違っていたかな、なんて思う。

まず絵が良い。人も草木花も生きている。
主要なキャラクターは男性2人に女性1人。ありがちな三角関係はなく、切なく美しい物語が広がっていました。
それぞれの視点で描かれているところ、その絶妙なバランス、誰に肩入れして読んでも良いし誰も放って置けない。それでも、蚊帳の外なのは誰?と常に考える。

2巻、多肉植物の鉢植えで埋め尽くされた葉月くんの部屋。泣くわ、あんなん。
あんなに一途で熱い想いを抱えた子、応援せずにはいられない、とその途端、本当の本当に自分の命と引き換えに旅に出てしまった。
望み通り入れ替わっても、元妻の心変わり(…って言っていいのかどうか…)を目の当たりにしなくてはならなくなる島尾くん。辛い…辛いよ。生前の彼は、執着がないように見えてその実とても真摯に、生きることを大切にしている。皮肉屋のモノローグ、全てに想いが乗っていて、先生、すごいな、と。
六花ちゃんの生命力と芯の強さが、却ってどちらに転ぶか分からなくさせたよね。特に山のシーン。どうかどうか葉月くんを戻って来させて、と本気で祈る。

…要するに、最後までずっと涙なしでは読めなかったという。

番外編だけ少し間を置いてから読みました。こちらも更に良くって。
沈丁花を見て戦慄走るとか、普通は思わないはずなんだけど、物語に登場するその花々の意味、忘れないなと思いました。

紙本で公式ガイドブックを買ってしまうほどのハマりよう。(←これ、シーモアさんで扱いがないなんて!この作品や河内先生のファンには垂涎モノじゃないかな。そうでなくても、寄稿されている錚々たる面々…一見の価値ありです。超豪華。)
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