心中するまで、待っててね。
」のレビュー

心中するまで、待っててね。

市梨きみ

確かに残酷だがリアルほど残酷ではない

2023年4月8日
泣けると噂のメリバBL。興味本位で手を出しなるほどね……これは鬱耐性ないとへこむのもわかる。自分はそのあたり免疫付いてるので大丈夫だったが、過程が結構キツかった。福太がメンタル病んでくのもさることながら、下巻の葵の回想が特にしんどい。強くてかっこよいヒーローだった兄ちゃんの家庭が実は問題を抱えており、母親に虐げられていた。彼もまた福太に頼られる事で救われていた子供だった。子供がいる読者はぶっちゃけ直視しにくいんじゃないかな……犯人が葵に跨って~のシーンとか、直接的な描写じゃないにせよ、部屋の荒廃ぶりと合わせた胸糞悪いリアリティーが凄かった。ブリーフ脱がしてないから未遂っぽいが屍かんされた可能性もあるのか……。面白いんだがツッコミ所も結構ある。嫌がらせの犯人が葵で、福太への警告が目的だったにしろ、幽霊にあんな落書きできる?物理に干渉してくるのは相当強力な悪霊だぞ。葵はそんな感じじゃないし、「幽霊」って設定にするなら、説得力持たせてほしかった。じゃないと何でもアリになっちゃって萎える。真相がわかったのち客観視すると濡れ場がシュールでしかない……。
ていうか葵はともかく、十四年前に一瞬だけ見かけた子供(しかも当時は肥満児)の顔が「あの時の……」って一致するか?些かご都合主義すぎでは。
正直な所感動よりも鬱やグロの方が印象に残る。けれどまあ、死後でも大好きな人に見付けてもらえて、一緒に心中できた葵は同様の(あるいはもっと酷い事件の)犠牲者の中ではマシな方なのかなとも思った。まだ遺体さえ見付かってない子供がどれだけいることか……その現実をまるっとスルーして、「残酷すぎる」「子供にこんな事するとか信じられない」と拒絶反応起こすのもなんだかなあ……と自分は思った。
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