鬼は笑うか
」のレビュー

鬼は笑うか

木村ヒデサト

愛しい作品

ネタバレ
2023年5月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大好きな作品、おススメの作品ってのは色々あるけれど、愛しいなあと、大事に手で包み込んでおきたいと思う作品は意外と少ないものです。

この作品の凄いのは、良かれと思ってなしたことでもかえって相手を損なうことになるかもしれないことをきっちりと描いているところ。リアルなんだもの。怖かった。
一度教師によって救われたかに思えるところ、更に突き落とし、その上で、これでもかというぴかぴかをあてがった。
そう、星谷くんが光ってます。家族もみんなぴかぴか。育ちが良くて素行も良くて、この子が「かわいそう」と側にいてくれたことで柏瀬くんはやっとやっと救われた部分がありました。怖いから目を瞑って部屋の電気を点ける習慣も、時間が経つにつれ、柏瀬くん本人も忘れるくらいになっている。

大人の都合で何重にも傷つけられてしまった柏瀬くんの言葉が本当に切実で、星谷くんの突飛な行動もその切実さに呼応したもので。突飛さが優しく優しく労わります。
ぎゅーぎゅーと星谷くんに抱きつく柏瀬くんが愛しいし、二人で世界を変えたかったと泣く星谷くんが愛しいし。

鬼はこの二人を、この二人の一見他愛無いとも思える切実な将来の話を聞いて、本当に笑うというのか。
誰も笑えない。笑っていいのは当人たちだけ。
「鬼が笑った」というモノローグは、朝まで泣いた二人の未来を、心配ねえぞと予言して笑い飛ばしてくれたということなのかな。そう思いたい。

BL作品に登場する女の子の扱い次第では、作品の評価を下げたくなるのですが、こちらは良かったです。

5/19〜21の東京漫画社30%オフクーポンにて購入。
「闇系」作品で知った作者先生、本来なら出会わなかった作品です。
いいねしたユーザ5人
レビューをシェアしよう!