夜明けの唄【単行本版】
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夜明けの唄【単行本版】

ユノイチカ

4巻を読了、アルトにお礼を言いたい。

ネタバレ
2023年8月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ 心を掴まれ、それが故に茫然とした。自分にはそれほど衝撃的だった。自覚すると衝撃を受けたことにも衝撃だった。
“無理して自分を受け入れなくてもいい”。
4巻で続々と明かされる物語の一方で、同性同士の恋愛についても作者様の考えが示されているように思う。語弊を承知で言えば、BLではよくあることで、既に様々な文法で擦られた話だ。その流れからの「ありがままを受け入れる」「ありのままの自分で良い」。これはBLに限らず、一世を風靡した文言でもある。
一世を風靡しただけあってなるほどその通りなのだと思う。その通りなのだと思うけれど、どこか苦しく感じる自分もいた。何故息苦しく思うのか理由は分からず、ただ自分が天邪鬼なのだろうと思っていた。
しかし、その後のエルヴァとアルトのやり取りに、瞬間動転した。
理想の姿、おそらく手にしただろう自分の姿とはかけ離れた現在の自分の姿に失望しているエルヴァ。その自分自身を受け入れられないことは、そんな自分を愛してくれる最愛の人にも反するようで葛藤する。ありのままの自分を受け入れるべきなのだ、と。
そんなエルヴァに対して事も無げにアルトが言う。”無理して自分を受け入れなくてもいい”と。
心にあった息苦しさを発する痼りから、あっさりと解放された。そして自覚した。ありのままの自分を受け入れることが出来ない自分を。何故息苦しさを抱えていたのか判ったことに衝撃だったし、自分にそのような殊勝な部分があったことにも驚いた。
判ってしまえば、とても嬉しい。無理に自分を受け入れる必要などないのだ。それこそ、自分を受け入れられない自分を認めてしまえば良いだけのことだ。自分を受け入れられないことは悪ではないし、何を自分は勝手に苦しく感じでいたのだろうとさえ思う。
エルヴァがそれまで何ページにも渡って葛藤していたのに、アルトに言われ、あっさり1ページ程で解放される。その心境はまさしく自分のものと一緒で、それも嬉しい。本当にそうなのだ。漫画の登場人物の、大コマでもないセリフにあっさり救われた。
本格的なファンタジーで設定もストーリーもとても作り込まれていると思う。当然セリフも丁寧で、私もアルトにお礼が言いたい。アルト、すごい。ありがとう。
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