君がわるい恋の話
」のレビュー

君がわるい恋の話

大麦こあら

こあら先生やっぱ面白い。読めて幸せです

ネタバレ
2023年9月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ こあら先生って頭良いなぁと思っていますが、今作は意外なところで再び実感しました。
それはキャラの作り込みと絡ませ方にです。
タイトルの「君がわるい」を「気味が悪い」に掛けてあるように、攻めの拓郎はずーっと薄気味が悪いです。

陽キャで誰からも慕われ続けている拓郎には普通の感覚では理解できない闇が存在しています。その理由となる根源を拓郎本人に第五話で語らせています。
「無条件に肯定されて信頼されるのは怖い」。。
人に嫌われることが怖い凡人の私からすると、こんなにハッキリと言われてもその感覚が理解できません。
何を言われても何をされても根底に理解できない部分があるので、感覚のズレが気持ち悪いんです。でもイイ奴なんですよね。ワケわかんないけどイイ奴。
しかしかつての友人へのわだかまりが解消された時、(それはひろむのおかげで)もやっとしていた拓郎の印象がハッキリと実体を持つ好青年に生まれ変わったように感じました。
例えるなら合わせ鏡の中で動いていたのが、突然鏡のこちら側にワープして来たような感覚でした。

対するひろむは隠キャモブ枠なのに、実はボッチをものともしない美人な男前です。自分をしっかり持っていて他人にも配慮(共感)できるので、社会にうまく適応して拓郎以上にイージーモードで人生を送れる気がします。
その上、他人も物事も手放しに信じ切らない用心深さも兼ね備えています。それが行き過ぎてか、サイフ事件を拓郎のマッチポンプかと本人にズバッと言ったりして、ただの可愛い人にさせていないとことかメッチャ好きです。拓郎もそう感じてますます好きになったのかな?

そんな二人の間に恋が育っていきます。
前述のように複雑に掘り切ったキャラの気持ちを絡め、さらに尊くキュンとさせてくれるんです。一巻に諸々詰め込まれているのに構成や絵柄でスッキリ読めました。
ひろむが恋を自覚した雨のシーンにはグッときました。
気味悪い時の拓郎も、ひろむに好意を持った理由の筋道は立っているので恋愛物語を楽しむ妨げにはならなかったです。
ひろむがゲイであることで自己肯定感を低くしている今更な設定も、拓郎が「ひろむにとって」と考えてくれたことで個々人の問題にしてくれていてとても納得しました。

自分にとっても相手にとっても相互で『特別』になれたら。恋人でも親友でも。とても幸せだと心から思えました。えちも良かった…
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