Loved Circus
」のレビュー

Loved Circus

朝田ねむい

あらすじからは想像できない感情の揺れ

ネタバレ
2023年9月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 安っぽくないんです。チープじゃない、と言うより安易ではない。BLマンガだと、こういう時はこう言ってこう動いてこうなるのがマスト?普通?だよねーってのがありません。でも予測不能なのとは違うんです。納得できる。

例えば、男に入れる時の気色悪さとか、初めての3Pでのビビり具合とかの表現。
相方に指突っ込まれて刺激で無理矢理たたされてやっとおっさんに入れる。冷静に考えればどんな地獄だよ!ってシーンもタスクをこなす為に必要なことだよね、と思えて。でも同じシーンが相方に惹かれる理由のひとつになってて、こーいうのがすごく面白い思いました。
**
読後、全てのキャラが愛おしく思えました。
中でもシロのことを多く考えてしまっています。
団長夫妻が頑張って社会に適応するように育てても、シロの生い立ちには勝てなかった。どうしても性サービスからは剥がせない。それだけ性サービスがシロの生きる軸となっていたのでしょう。(そもそも団長夫妻が性を売る仕事の元締めなので一般的な環境から外れていたと予測される。)
それは深い愛を得た後でも変わらない。じゃあ、シロとケイが一般人的な幸せになることはないのかな?我々読者からはメリバで終わるのかな?と思いました。
結果的には、ああそうか、こんな風にしてやっとシロが「普通」を手に入れるのかと切なくて仕方ありませんでした。だってそれはシロにとっての普通を失くし、全く違う軸で生きることを強いられたという意味だからです。
しかも愛するケイとは一生繋がれない。数えきれないほどの他人とは身体を繋げてきたのに恋人とはできない。逆に、身体ではなく心だけだからこその尊い愛を感じて泣けてきました。
**
リーマンが風俗に入れ込んで投資に失敗して借金のカタで身体を売ることになる。
しかし思ったよりも居心地が良くて愛する人にも出会えて社会復帰もしてメデタシメデタシ。
そんな表面的なあらすじからは想像できようもない感情の揺れを得ました。
いいねしたユーザ18人
レビューをシェアしよう!