カメレオンはてのひらに恋をする。
」のレビュー

カメレオンはてのひらに恋をする。

厘てく

伝えるということを大切にする二人の純愛

2023年10月22日
発売日に買っていたのですが、ようやく読めたのでレビューしています。難聴を題材としたBLはこれまでも通ってきましたが、その中でも随一の表現力だと感動しました。私個人は手話に関わったことがないのですが、それですら知ってる手話表現が出てきたり、共に描かれる表情や効果で知らない手話でもなんとなく読み取ることができます。作者様が千手観音になりながら描いたという本作は、そのご苦労が読者に染み入るようで、漫画でここまで表現できるものなんだと新しい扉が開いたようでした。BL特有の強引さ(私は嫌いじゃないです)や、スパダリやご都合主義などは一切出てこず、現実味のある作風です。ドラマ化してもおかしくないですね。Twitter(X)でバズったのも納得の珠玉の作品です。

伝えるということは受け手側との共同作業であるということを痛感している二人。今までの人生ではそれがなかなかうまく行かずに悲しい思いをしてきたこともありましたが、ようやくしっくりくる相手に出会い、いつの間にか恋に落ちる。とても素敵な純愛物語だと思いました。
また、恋をしていると言葉足らずですれ違う場面が多いと思いますが、本作はお互いの違いを知っているからこそ、まっすぐに伝えることを諦めず、相手にわかってほしいという気持ちを隠さないところに強い好感を覚えます。

個人的には長いこと演劇をやってきた身なのでフジナガに共感する場面が多く、彼の葛藤に胃がぎゅんぎゅんする思いでした。フジナガは2.5次元俳優とかとても似合いそうですね。2巻では二人のさらなる成長と、胸きゅん恋物語が読めるかと思うと今からとてもワクワクしています。楽しみです。
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