外村探偵社の招かれざる客
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外村探偵社の招かれざる客

草間さかえ

草間先生の作品はすんごく面白いのだ!!

ネタバレ
2023年12月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 草間作品はとても面白い。これは動画ばっかり見ていてマンガの読み方を忘れてしまった方々には解らない面白さだと思う。
一見複雑に感じるストーリー(実は整合性のお手本!)、一見見づらい絵柄(実はメチャクチャ絵が巧い!)、一見訳がわからなくなるセリフ回し(実は無駄が一切ない!)。
漫画は紙面の右上から左下に向けて読むのだ、という当たり前を巧妙に生かして描かれている。
漫画は絵で伝わることは字で書く必要はない、その表現力が完璧に備わっている。
それらは読めば確認でき納得できる事実なのだが、特筆したいのはキャラクターとストーリーの見事な融合についてだ。
主キャラ2人の背景はそんなに緻密には描かれていない。なぜ松田は所長不在の探偵社に一人で住み着いて営業しているのか?なぜ神子は転々としていたのに高校時代に過ごした町に戻ってきたのか?(或いは居続けて)。
そんなことは描かなくてもストーリーに必要なキャラの性格はこれでもか!と言うほど描かれている。とは言え前述のハテナが残されているので不穏と言えなくはない空気感の中でお話が展開されているのが魅力にもなっていると思う。またハテナの解答が読み終えた時にこれかも?と想像できるのも良い。
この性格の主人公たちだから、この事件でこういうふうに動く。特別な能力や地位や経済力など無い一市民なのだが、ストーリーを通して感動させてくれる。キャラ本来の魅力が生きているお話作りと言うか、やはりキャラと物語が見事に解け合っていると言いたい。
脇キャラの役割と投入も同じように素晴らしい。ピカリと光って物語を彩り潔く去っていく。しかも悪者にまで愛着が湧いてしまう不思議だ。

BL表現は言うまでもないエロス。ノンケ(だと思っていた)が攻めに転じる心情もお話が進むにつれ徐々に納得でき共感すら覚えてしまっていた。そこには愛らしきものを自覚する匂わせや、一抹の切なさもある。BLを読む上で欲しかった感情を上等なクオリティで十二分に得られた。

謎解きの面白さ、二人の関係の行方、3ヶ月と勝手に括った蜜月の残り時間からくる不安、等々。一冊にてんこ盛りである。
本当に草間作品は面白いのである。
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