五百路准教授の密かな愉しみ 【電子限定特典付き】
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五百路准教授の密かな愉しみ 【電子限定特典付き】

由元千子

同じレビュアーとして胸騒ぎが止まらない

ネタバレ
2023年12月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 同じレビューを書く者として、登場すると気になってしまう存在がBLにいる。
アダルト グッズにハマってやけに詳しいレビューを書くレビュアーだ。

だが、彼らはどちらかというと実用性重視。いかにそのグッズが他の商品と違っていて、快楽をもたらすかを書けばいいので、BL作品のレビューのように語彙を駆使していかにその作品が自分に対する精神的な訴求力を持つのかを書く必要がない。そう思って自分とは切り離して読んできた。

ところが、本作表紙のイオジ氏は、工学部准教授で、イヤホンなんかのレビューをam○zonで書きながら、同じアカウントでアダルト グッズのレビューを書いちゃうっていうね…いや、あのサイトのレビューがアカウント名で紐づいてるって初めて知ったわけだけど(これ、表紙でバレてるから許してくだされ)。
どんな恥ずかしいことを書いても、知り合いにバレるはずがない。日頃の肩書きや外聞を気にせず、自分の感性をくすぐる推しを推して、それに共感してくれる人がいたら、嬉しいな…なんて思ってBLのレビューを書いてる自分とイオジ氏との内面の共通点を感じてしまい、きっと作者の狙いとしては、教え子のスガイ目線で、イオジ氏が保っている体面と似つかわしくない内面を探って面白がって読む趣向の作品なのに、事もあろうか、イオジ氏に感情移入してしまい、その後とんでもない共感性羞恥に晒されたのです…。

スガイ君が、イオジ氏のアカウント名「ねこわたさん」があの准教授じゃないか?とレビューを読みながら妄想してイッてしまうシーンのエロさも良かったのですが、なんと言っても恥ずかしかったのが、教え子に自分が書いたアダルト グッズのレビューを音読されたときのいたたまれなさですよ。もし、自分の身内や職場の人に特定されて、自分が書いたレビューを音読でもされたならば。全身から冷や汗が流れて悪寒が止まらないんじゃないか…。そんな思いにとらわれてちっとも落ち着いて読めないのです。

しかし、このイオジ氏、そのレビューを可愛がっていたスガイが読んでいると勘付くや、更にエログッズのレビューを更新して、ウブな教え子を翻弄していくドスケベ。うっかり感情移入したことを後悔する変態なのです。こんな変態野郎に感情移入しただなんて、なんたる不覚…と、作者に対する謎の敗北感に見舞われる読後感…と複雑な心境になりつつハピエンに安堵!面白かった!
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