セクシー田中さん
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セクシー田中さん

芦原妃名子

理屈っぽくないのにいろいろ考えさせられる

2024年2月7日
試し読みして大いなる期待を抱いて、最新第7巻迄買ってあった。未完であってもドラマ化してるなら完結の道筋ついてるのかも、という思いもしていた。
いつ本格的に読み始めようか、という矢先に先生の事が、スマホ速報にTVに。情報収集を開始。時系列でその経緯を具に拾い上げて追っていって顛末は理解した。暫くこの作品に手を付けられなくなっていた。動揺もあったし、辛い予感もして、他の漫画で気を紛らわした。でも昨夜やはり読もう、と。直近刊第7巻迄一気読み。絶妙にコントロールされた1話1話で、現実的思考と希望的思考が映し出される。
才能ある先生、こんなお別れになるなんて、惜しくてならない。悲しく悔しくやりきれない。
完結するところまでもう読めなくなるだなんて。
心よりご冥福をお祈り致します。

意表を突く、もうひとつの田中さんの姿と、今のキャラを形成した子ども時代からの他人との関わりからの痛み。まわりの登場人物達も自分達事情あって生きている。笙野の言葉と態度!そして、田中さんとの交流、進化。それぞれの家庭環境。散りばめられたエピソードが結果的に各人に次の化学反応を起こす。
一人一人の人生が、微妙に方向を変える。言葉が選び抜かれて、こちら読み手の人生観を拡げてくれる。
大きめの笑いを取るかのエピソードにも、キャラ設定上の矯めがそれまで所々入って来ていたので、ウワッとしても柔らかにどんな展開になるかちょっとワクワクと読める。

ベリーダンス、旅先では鑑賞の時間があったが、日本でも機会があれば是非生で観たいと思った。


出来る限り少しでも多くの人に、この作品と先生のことを知って欲しいと思う。

以下1024/10/13追記。
8巻目、諦めていたら発売が!
単話で買い足していたけれど、この際だからこちらも購入。しみじみ思い返す。衝撃とやるせなさと、絶望を。
でも、あの時勇気を出して読んで、そして今改めて、メッセージを想像する。
もう帰っては来ないけれど、作品はある。続きは無いけど、作品は確かに存在して存在を訴えてくる。
読んでよかった。

同時収録「winter fool」月刊flowers誌2016年11月号。
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