インカミングコール・ラバーズ【単行本版(限定描き下ろし付き)】
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インカミングコール・ラバーズ【単行本版(限定描き下ろし付き)】

鶴子

「修正過敏症」と「着信恐怖症」からの脱却

ネタバレ
2024年6月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 鶴子先生といえば、ムッチムチの体躯のメンズの絡み合いがお楽しみの…と下心満載で新刊を手にしたところ、絵柄がスッキリとなり(表紙より中の絵の方がキレイ)、25歳のシゴデキ広告会社営業マン×25歳の頑張りや広告デザイナーというリアリティある仕事BLでした!

終始、デザイナーのわたる視点で描かれる中、せっかく作り上げた試作にクライアントの「修正」の指示が入った、と営業の蔵式から電話が入るときの尋常ではないビビり方に、どうしてもBLならではの「修正=息子くんの修正」がチラつく我が煩悩に(お互い、違う意味での「修正過敏症」なのね…)と、蔵式から着信があるだけで憂鬱になっているわたるへのいたわりの気持ちを持ちながら、読み進めていきました。

広告業界におけるクライアントファーストがもたらすハードな現場に加えて営業の蔵式の無茶ぶりもこなすわたる。どこかM気質の漂う仕事っぷりに、すわケンカップルか?と思いきや、普段スンとしている蔵式がふいに見せる優しさ、思っていたより早くわたるに伸びる手。澄ました態度から時折のぞく執着と興奮とソフトなSっぷり。口にしない本心をチラ見せしているようで、最後まで蔵式の本音がどこにあるのか?と引きつけるのが、声は聞こえるけど、表情の見えない電話を小道具にする巧みさなんです。
なんでも表情に出て分かりやすいわたるが不安になったり、期待したりする態度が、蔵式からの着信があったときのわたるの態度に全部出ていて、最初のシーンと比べると、その変化が感慨深い。

そんなわたるが、蔵式とLな関係になってから明かす秘密は、まるで心の中の秘密基地。男性である彼にとって、その純真さを表現するような秘密基地で明かされる蔵式の本心…いや、分かっていたよ。なんなら、会社で2人を見守る同僚の桃さん含めて皆分かっていたけど、2人だけが共有する世界の象徴のような秘密基地で、本当の意味で結ばれる姿に胸アツ…。鶴子先生ならではの、エッチが本当にエッチな描写はそのままに、登場人物の心情の変化を繊細に描いた良作でした。

さて、自分が修正過敏症だと自覚した本作の修正具合ですが、がっつり白抜き。身体にトーンが施されているため、白くて神々しかったです📱
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