ライオンハーツ【単行本版】
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ライオンハーツ【単行本版】

三田織

二人なら強くなれる…

ネタバレ
2024年6月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 幼馴染み物のテンプレBLのように一見思えるが、二人のあり方が周囲からの揺さぶりの試練にどう反応するかが描かれる。親、クラスメートの考え方はいわば社会の岩盤層の小さい一角に過ぎず、これからも何かしらあるだろう。芸術系はそこは寛容だが、普通科はそうではないところがあるだとか、親の職業でも子への接し方の違いを描き分けるだとか、設定に因ってのそんなストーリーの流れが、BLジャンルあるあるのファンタジー色を遠ざけており、そうした作劇の工夫もあって、物語暗転時の二人の衝撃弱からぬ様子や相手への想いかたにドラマを感じた。
家の中や水族館シーンの絵、すごい。生活空間の表し方に引き込まれ、魚やクラゲの素晴らしい生きている感じに圧倒され何度も眺め直した。正直初めて読んだ三田先生の別作品では先生の絵の持つ迫力に全然気づけなかった。

二人共を同じ試練の同じ揺さぶられ方させずに、あくまで個別の生き方考え方を取らせて交わらせているところも、読んでいてどれ程よく知っている間柄であろうと他人同士が関係を構築する感じが有った。いつどこで出会おうともという、タラレバを考えても揺るぎないところが最後爽やかにしているが、獅子丸をああした性格付けしたことは、読み手の中に少なからず令央贔屓を作り出してしまったことだろう。
現実を生きている者としての揺らぎを獅子丸に負わせて、主人公を完璧ヒーローにしなかったことは、本作クオリティへの功績とも感じるのだが。
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