新宿69へヴン【単行本版(シーモア限定描き下ろし&特典付き)】
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新宿69へヴン【単行本版(シーモア限定描き下ろし&特典付き)】

ウノハナ

清々しく充実した読後感

ネタバレ
2024年7月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 歌舞伎町が舞台ということで結構及び腰で読み始めましたが、清々しく充実した読後感で大好きな作品になりました。
こちらの作品はヒロムの帰る場所がない、居場所(ホーム)がないという思いが、物理的な家を通して描かれていて、ヒロム(と沢木)の心と相関関係があるような感じになっている、という風に読みました。
借金で家がなかったヒロムが、ルームシェア企画で温かいホームの疑似体験をして、その後住んだ帰って寝るだけの部屋や、昔こんなところに住んでやると思っていた沢木のタワマンを経て最後にボロでも慶太とずっと一緒にいられる温かいホームにたどり着きます。
同じ構図でセリフが正反対になっていたり、慶太とヒロムが逆になっていたりして、最初は慶太がヒロムに沼落ちだったのに、次第にヒロムが自分に嘘がつけなくなるほど慶太に惹かれていく様子が巧みに表現されていると思いました。セリフも含みが感じられたり、事件が絵で暗示されていたりして、ウノハナさんの作品を読んだ限りでは、もっと直接的というか、明快な表現をされる印象だったので意外な感じがしました。かなり凝っていると思いますが、この作品の雰囲気に合っていると思いました。
そしてみなさんおっしゃるように二人のキャラクターがとてもよいです。
慶太のボーイと客の関係の中でしか生きられないと思っているヒロムを理解し、その関係の中でだけ愛を伝え、でもそこから出てきたいとという様子を見せた時はしっかり手を差し伸べるところや、ヒロムが身体一つで生きていることへの労りにグッときました。
ヒロムのかわいさというのはボーイを始めてからの魅力だと思います。自分は全て失ってからっぽだと言いますが、人間的に成長して得たものもあって、そこで慶太と出会って新しい一歩を踏み出すところに繋がっている、そんな肯定感があるところがよいと思いました。自分の奥底にあった感情にも気づかなかったヒロムが幸せになって本当によかったのです。
先に単話で読んでましたが、単行本はセリフがちらほら、絵もいくつか変更され、最終話に二人の新しい仕事のシーンが追加されてますね。単話と少し印象が変わりました。単行本は単行本で予想外にいろいろ楽しめました。
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