背徳感がスパイスとなって

ネタバレ

2024年8月10日

このレビューはネタバレを含みます▼ 1960年代のアメリカ。厳格な父に育てられた新米刑事ネス、行方不明者の捜査、山中の教会、そして美しい神父セオドアと真っ白な百合に雪。一つ一つの場面やモチーフに意味があるように思え、犯罪捜査ものの不穏さを携えながら、もう登場した初っ端から、タダモノではない色気を放つ、タレ目の白人神父セオドアの視線に、読者もからめとられそうな繊細な線で描かれる絵の力に惹きこまれてしまう。

このセオドアが、神父なので柔らかい物腰に丁寧な言葉遣い、そして、人の内心に対する洞察力に優れて、その気持ちに応える言葉に包容力があって、魅力的すぎるんですよ…。
刑事のネスも、抑圧されてきた感情を受け入れてくれる相手として意識するようになるのだけれど、神父であるセオドアの距離がさ…一々近くて、意味ありげで、これじゃ、まともな恋愛をしたこともないネスが夢中になるのも仕方がないよ、と思う態度と、ネスの内心への浸食が凄くて。読んでいるうちに、神父セオドアが白いトラで、ネスが黒いワンコに見えてくるくらい、２人の凸凹感があって笑。

でっ、大好物の神父受けなんです！はい、白いトラにがっつく黒いワンコの可愛らしさを愛でてやってください！そして、R18なんで、神父様のあまりにあられのない姿、絵の構図に、大変申し訳ないながらも大興奮✨昼間の落ち着いた神父姿と、夜の姿のギャップに参った…特に後方からの視界が良好なので（笑）、「あ、あ、ありがとうございましたー！」と謎の御礼の言葉を口にしてしまうほど。

しかし、聖職ものの最高の旨味は、やっぱり背徳感ですよね。ホント、視覚の面だけでなく「神父様！」と様呼びで、赦しを乞いつつ、襲いかかるネスの興奮度合いが半端なくて、もう、かわいいー（歓喜）！

ラストの展開はネタバレなしで是非読んで！なんですが、後半、明かされるセオドアの半生を振り返ってそもそも彼がなんで神父になったのか？と考えると、ああ、そのためだったのか、と腑に落ちるのです。それまで白いトラだった彼のイメージが白い蜘蛛に転じるほどの印象の変化があって。

ラストは、ハピエン、そのための演出的結末という解釈で良いかと。ネスとの関係性のダイナミックな変化も読み応え有。驚きのデビューコミックス。描き下ろしも、シリアスな本編とは違うゆるい味わいが誠に良き。ストーリー重視派にもエロ重視派にも👍