もう少しだけ、そばにいて
」のレビュー

もう少しだけ、そばにいて

白野ほなみ

もう少し、を積み重ねて

ネタバレ
2024年9月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙の優しい雰囲気に惹かれて購入しましたが、とても現実的な、隠してしまいたい部分までをも露わにして登場人物たちの人生を伝えてくるような、強い気持ちで描かれただろう作品でした。

事故に遭い車椅子生活となる晴人。学生時代からの恋人の晃。二人を結びつけた先輩の芝。各話学生時代の回想から始まりますが、現在の彼らの状況が甘くないだけにその都度胸が締め付けられます。
事故は身体の自由だけではなく恋人の未来までをも奪う。晃の明るさと心配してくれる先輩の存在で救われますが、とても辛い内容です。一人で乗るタクシーで見つけた小さな希望に、全てが当たり前にある世界になればいいと、そう願わずにいられません。

後日談では甘える晃の姿がとても嬉しい。番外編のプレゼントも、とても可愛いらしいお話で和みます。

そしてエピローグは、濃縮されたその後の人生。秀逸過ぎて苦しい。終わったら一人で、のメモと、重ねた手からにじむ愛。それでも、もう少しだけと願わずにいられない。タイトルの切ない願いが強く胸に届きます。自分の人生も振り返り、大切にしていこうと思わせられました。
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