果ての荒野でバカンスを
」のレビュー

果ての荒野でバカンスを

赤河左岸

美しく深い愛のファンタジー

ネタバレ
2024年10月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 3つのお話が収録されています。
全て、愛の本質を描いた素晴らしい物語でした。
よくぞこれほど深い愛の真理をついたストーリーを短編にお纏めなさった。

ネタバレ無しでまず読むことをお勧め。私もそれで心底堪能致しました。

巻頭の「ふたりぼっちのエバーアフター」は、途中「あれ?」「ん?」と小さな違和感が散りばめられていたものが 最後にガッと伏線回収され、その伏線全てが愛でつながっており
あまりに感動してもう一度戻って読み直しました。

「蛙の王子様」は、設定こそ珍しくはないものの、切実で嘘の無い、人間らしいけどとても美しいお話。
着ぐるみ姿の主人公が可愛くてたまりませんでした。

表題作は更に輪をかけて衝撃的でした。
設定は良いんです。結末も、予想できる人もいるでしょう。でも、なんていうか、最後に何とも言えない、不思議な感覚になります。
目の前に確かにいるルキヤという存在をどう定義づければいいのか。
三年間一緒に居た。地球との通信とは別物という認識をしていたけれど、確かに心の支えだった。
むしろその事実があるからこそ、この先もシンは絶望せずここで生き続けられるんだと思う。
けれどずっと想っていたルキヤではない。でも「魂だけでは不足かい」とルキヤが聞いた、そのセリフにあるように、魂はルキヤ。でも物理的には魂ですらないはずで、これからの2人が紡ぐ時間は、ルキヤ本人の幸せな記憶とは成り得ないはず。
ルキヤも幸せになって欲しかった。このあたりがとても混乱というか、独りで勝手に葛藤してしまった。それでもシンに心の支えが残されたことを本当に有難く思ったし、これからずっと2人きりのバカンスを謳歌して欲しいと思った。
このあたりの読者の複雑な気持ちをまるで予想していたかのように、「エンドロール」を描いて下さって、少し救って頂けました。

とにかく上手く説明出来ない。レビューを書きながら整理していたら、こみ上げて泣けてきた。
本当に、このページ数でここまで感動させる左岸先生とは一体何者ですか。
短編なのに、全ての登場人物にどっぷり感情移入しちゃったし。
今回はじめましての作者様でしたが、圧倒されました。
そして描き下ろしのなんとキュートなこと。
他の作品も本気で漁ります!!

ネタバレしないように書き始めたはずだったけど、やっぱりネタバレになっちゃった。
内容に触れずに感想書くの無理…!
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