茅島氏の優雅な生活
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茅島氏の優雅な生活

遠野春日/日高ショーコ

独特の語り口と茅島氏の愛らしさにメロメロ

ネタバレ
2024年10月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1巻を読み始めるなり、この独特な文章とミステリアスな茅島氏に一気に引き込まれて3冊夢中で読んで、時系列の答え合わせがしたくてすぐに2周目読んでしまうほどはまりました。他の方のレビューで「ノーブルなお伽噺」と表現されていてまさにその通り。
茅島氏の日常を淡々と書き進めていきつつ、時に他者の目線、時に庭師の目線を織り交ぜることで「茅島氏」という人物の輪郭が浮かび上がってくる。現在と過去を短編としてバラバラに配置することで、全部読むとなるほどそういう事だったのかと謎解きのようなワクワク感がある。1巻の春の嵐の日の顛末に驚き心を掴まれる。全てはここから始まったのだ。

2巻の庭師の旅先でのデリカシーのなさには心が大荒れ。事前承諾もなく引き合わせる・ボディタッチ・他多数。も〜庭師ダメダメ過ぎて茅島氏ちょっとくらいレスリーとオイタしちゃってもかまわん私が許す、庭師はザマァされろ!と思いました。
3巻の特別な夜の茅島氏の装いには、彼の思いの深さを感じて涙しました。対する庭師のお返しも素晴らしかった。

美人医者とのお話はまるで百合のよう。茅島氏、恋バナしたかったんやねぇ。ノロケに振り回されて憮然としてる医者も人間味があって微笑ましい。2人のキスを不誠実だとする感想も多いようですが、なんか女子高生が友人に抱く友愛や執着みたいで可愛らしく感じました。親密に触れ合いたいけど性欲はないよ…みたいな。茅島氏は庭師が初恋でこの先も庭師しか知らず、嫉妬も独占欲も恋愛にまつわる何もかもを庭師としか経験しないのですから、これくらいのアバンチュールはあっても良いのではないかな。現によいスパイスになっているようだし(笑)

ちなみに美人医者のお話は「夢のつづき」という作品で読めるようです。他にも大学の同級生・久住や緒方兄弟など謎めいた脇役が何人かいましたが、どこで読めるんでしょうね…。
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