テンカウント
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テンカウント

宝井理人

触れることは怖い

2024年10月21日
今読み返してみても面白すぎて頭が痛い。先の展開を知っているのに、本人たちの気持ちを考えると胸が痛い。重たい独白や張り詰めたやり取りに息が苦しくなる。もちろんBL漫画として、それなりのファンタジー性をもって描かれている部分もあるのですが、感情描写のリアリティが凄まじくて、細部に行き届いた残酷さと柔らかさに驚きます。あと、扉絵の美しさ、圧倒されます。よくある二人の絡み絵だけではなく、二人を取り巻く状況や状態の暗喩、描き込まれた背景、抜群の色彩センス。絵に詳しいわけではないのですが、テンカウントの扉絵は温度のあるものというより、主役二人をモデルにして撮影された、撮り手の意思で作られた世界観の絵のような気がします。
相互救済の再生の物語ですが、ただ癒されるだけではなく、痛みを乗り越えて進むお二方のお話です。何回も引っ掻いて瘡蓋剥いで嘔吐して泣き喚いて、それでも互いが希望に見えたから立ち上がろうと思えた。静かなように見えて骨太な内容が好きです。
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