off you go
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off you go

一穂ミチ/青石ももこ

大人の作品ですね

ネタバレ
2024年11月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者買いです。『イエスかノーか〜』から始まって、あまりにおもしろくて『雪よ林檎の〜』で、さらに一穂先生の本にはまって、逆行するように過去作を読んでいますが、この作品とこの後の『ペーパーバック』を含め、激推ししたい!本当にすごくおもしろいです。レビュー数が少ないのが不思議なくらい。なので拙いですが、本作が面白いことを記したくて書いています!本作は残酷な三角関係だと思うのですが、長い月日の中でそれぞれが納得のいくように終わらせることができてよかった。でも、手放しで喜べるかというとちょっとの重しがあるような気もします。十和子の視点ももう少し増やしてもらって、彼女の気持ちを掬って、それぞれの視点が同じ分量で三人の世界に浸かっていたい…それくらい、魅力的な作品でした。密が、良時と十和子がひとりなら、と言った言葉に彼の苦悩の日々がうかがえます。この台詞を読んだとき、泣けました。密にとって十和子は、自分の一部のようであり失くすことのできない大切な存在だと感じます。だからこそ、指輪を外してしまってもこのお話は救いがあり、愛してる、の言葉に説得力があります。人生の踊り場に来てしまったという密。でも、ここまで来たからこそ良時と十和子との三角関係を終わらせることができたんでしょうね。前作『is in you』で、冷めた密が一束に対して激しい感情を見せた時、彼の背景にとても興味を持って本作を読み始めました。良時が、やっと、密に気持ちを伝えられた時、密が人生の踊り場で良時を選べた時、とてもうれしい気持ちと共に、十和子を思うと寂寥感も込み上がってきて。こんな複雑な気持ちだけど、とてもいい作品だと思うのは、一穂先生の力量なんだろうな、とますますファンになりました。大人の何十年越しの恋のお話ですね。良時についてあまり触れませんでしたが、良時だからこそ、三角関係になった素敵な人なんですよね。十和子の兄としての立場で、決して自分の気持ちを認めることは出来なかったと思いますが、長い苦悩を十和子も分かっていて、この兄妹が一人なら、と密の台詞のように思わずにはいられませんでした。静かに、でも熱のある作品です。
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