偏屈なクチュリエのねこ活
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偏屈なクチュリエのねこ活

月村奎/野白ぐり

ねこ活ですが、ねこは登場しません

ネタバレ
2025年2月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 無実のスキャンダルで芸能界を干されどこにも行く当てがないリオンと、彼が野次馬に絡まれていたところに現れた洋裁店の店主・大我のお話。

クチュリエって何? と思って検索してみると「フランス語で男性の裁縫師やデザイナーを意味する言葉」とのこと。

洋裁店といえば現在ちょうど朝ドラが再放送されているので私的にはタイムリーな感じでした。
ちょっと違うでしょうが、店先のイメージが完全に朝ドラの舞台になってしまいました。

おおまかなストーリーとしては、傷ついたリオンの再生物語といったところでしょうか。
誰かに愛されたい、誰かに必要とされたい欲だけで芸能界に踏み込んだリオンには、本人が自覚している通り覚悟が足りなかったのでしょう。
もう一度芸能界に戻って頑張るストーリーも好きですが、この作品は戻らず別の道を選んで正解だったと思います。

ベテラン作家さんだけあって、本文はとても読みやすくストーリーにもスッと入っていけました。
洋裁店でのリハビリ的な生活、大我の元妻や洋裁店の常連のお婆さんも良い人で、のんびり優しい空気感が本当に良い感じ。
読んでいる方も微笑ましくなり、いつの間にか癒されていました。

そんな空気感がとても好きだったので、元彼(と言ってもいいのでしょうか?)木島がストーカー化する展開はイマイチでした。
これが無ければ2人の距離が縮まる展開になるのはまだまだ先だったかもしれないので必要だったのかもしれませんが、ちょっと雰囲気が壊された気がして残念でした。

ただ、木島までもが再生するのはさすがだな、と。
登場人物全員が何かしら得られてラストを迎えられたのではないでしょうか。

タイトルに「ねこ活」と書いていたので、猫の登場を今か今かと待っていたのですが、最後まで出てくることはありませんでした。
表紙で何か抱っこしていたのを猫と勘違いしてました。ウサギのぬいぐるみだったのねw
猫はリオンだったのでしょう(気付くの遅w)
作中大我が気持ちを言及するシーンは自らが告白するとき以外全くありませんでしたが、ねこ活視点で読んでみると…なるほどそこかしこで愛でてました(笑)
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