このレビューはネタバレを含みます▼
記憶を失った謎の青年リネアと、恋人に去られた傷を抱える面倒見の良い料理人アヤのお話。
リネアもアヤも、去った恋人のサイラスも、全員が苦しみ悲しんでいる。誰かが幸せを感じれば感じるほど、まとわり付く不穏な空気に不安を覚えます。
アヤの辛さを思うと胸が痛くなりますが、サイラスもリネアも、アヤと出会えたことで救われています。温かいスープや美味しそうな食事、そして爽やかな香りがしてきそうなブラッドオレンジ。食べることで生きることを選んだその瞬間には感動するし、たとえ悲しみや怒りを抱えたまま生きていかなくてはならないとしても、そこに包み込むような愛が確かにあると感じました。