あの日、制服で
」のレビュー

あの日、制服で

中村明日美子

BL界の鳥○明

ネタバレ
2025年4月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 戦闘力53万。2000年代初頭より変わらず第一線でご活躍なさっているご存じレジェンド作者さま。耽美からコメディまで幅広く描き分ける多彩な能力の持ち主で、その独創的な世界観は誰にも真似できない領域にまで達しているのではないかと存じます。
本作は、そんな明日美子先生という巨匠をちょいと味見するにはもってこいの短編集。
本領の耽美はほんのちょっと、切ないラブに甘酸っぱい青春、先がないように見えてきっちり出口の用意された後ろ髪を引かれるような作品が目白押し。曖昧な関係を全面に押し出した抽象度の高い物語からわかりやすいものまで、どれも心に残る作品ばかり。粘度、湿度が伝わるかのように妖艶でややアブノーマルなセック スシーンも、もちろん各話に挿入されています。
中でもわたしは『A先輩』が1番すき。先生の描く攻めは大型ワンコタイプが多いように思いますが、このお話に登場するA先輩はレトリーバーみたいにおおらかな雰囲気の人物。そんなA先輩の想い人C君はかわいそうにA先輩ではなくB先輩に想いを寄せていて、A先輩は好意のベクトルが自分に向いていないことを知りつつもC君とつき合うことになるんだけれど…果たして本当にC君を大事にしてくれるのは誰なのか?短いお話だし名前も記号的で説明もほぼないにしても、筋がきちんと通っているのでいたずらにモヤモヤしません。「あれ、もしかしたらB先輩はA先輩を狙っていたからあんな行動に出たんじゃ…」なんて読後に推察してしまうほどすべてにおいて楽しめる内容。

数あるお話の中でも暗めなテイストが刺さったお方には、よりエログロに振り切った初期作品をお勧めします。
『コペルニクス』に『鶏肉倶楽部』などなど、絵柄は今ほど安定していませんが一作一作がものすごく濃いので、読めば向こう数日間は明日美子ワールドに囚われること間違いなしです。
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