アンバランス・バランス
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アンバランス・バランス

上野ポテト

わからないから価値がある

ネタバレ
2025年4月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ これほんとに『ちとせくん』の作者さまですか??思春期をこんなにこそばゆく描けるということはやはりあの作者さまなのだろう。

ヒモとエリート。特殊な過去を共有する中学の同級生が大人になり偶然?再会。トラブルに乗じて瀬田が園山を“飼う“というベタな始まりから意外な方向へと発展していく、先の読めない斬新なストーリー。
学生時代、投げやりでいていつも瀬田を助けてくれた園山が、どうしてここまで落ちぶれてしまったのか…園山の家庭環境がネット社会だからこその切り口で明かされていくくだりは時代を反映していて本当にお見事(これを機に?瀬田は園山を秘密裏に追い始める)。
ネグレクト気味に育った園山が行っていたあれこれはただの生存戦略。それをやさしさだと信じて疑わず園山を理想化する瀬田。なんで瀬田はこんな俺なんかを…瀬田を試すようにだらしない行動をとりつつも「雇った以上はちゃんとしろ」と咎められすぐパチに向かうあたりに静かなる葛藤が伺えます。それなのに、どうして甘党なあいつのためにお菓子の景品を選んでしまうのか…
一方の瀬田は何か条件をつけなければ園山が自分の元から去ってしまうのではないかと怯えている。そのくせ園山を好きなあまり「お前を理解したい、自分ならわかってあげられる」と心に土足で上がり込むような傲慢をかましあえなく拒絶されるも、そんなことでへこたれる瀬田ではなかった…自分の何が悪かったのか、どうすればいいのかを手当たり次第相談しまくるバカ正直さは見ていていっそ清々しい。園山が憤るのもむりはない…気付いた瀬田は、望んだところで相手の気持ちを体験的に知ることはできないと実地(タバコ吸ってみたりパチってみたり)でこっそり学ぶのでした。
結果として園山くらいの拗れ方には瀬田くらいの変態ぶりがちょうどよかったものの、理解にかこつけて相手を追いつめるのではなく違いを認め尊重する姿勢が大事なのかも。未知の部分があるからこそ瀬田と園山、それぞれに価値があるのだから。

正直キス&エチに色気は期待できませんが、テーマがテーマなだけに結ばれる瞬間はグッときます。
もし続きがあるのなら、園山が某事務所で働くその後があっても面白そう。
それにしても瀬田くん…描き下ろしでM疑惑が晴れてほんとうによかった(わたしも疑ってた)。
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