オンリー・トーク
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オンリー・トーク

一穂ミチ/志村貴子

お笑い道×敬愛 沁みわたる恋心

ネタバレ
2025年4月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 何事にも塩対応低体温、若手の芸人小峰くん。全然そうは見えないけれども、超強火で推しの先輩芸人、飯田に近づきたいがためにお笑いの世界に入ったという。
なんで、どこが推しなの?どうして笑わないの?などの理由と種明かしはスムーズで、飯田のことになると感情が激烈に爆発していたり、普段鉄面皮なのにガタガタに表情が崩れたりして、ただただ可愛らしい。
もう、ホントにホントに…好きなんだねえ。

同じお笑いの世界に身を置いていても、笑いの質が多様であるように、その目指しているところやモチベーションってみんな違う。若手は特にスタイルを作り上げるだけでもいっぱいいっぱいでしょう。
憧れの先輩の言葉は、刺さって指針になって、自分にはないと思っていた情熱を燃やす糧になる。
周りから見ると無茶振りに思える落語披露や、芸人だからと教えてくれた秘密、そんなちょっとずつが降り積もっていく。波長が合う瞬間がある。
欲が出て、ふと敬愛が恋に変わる。
第4話最後のモノローグに、ビリビリ痺れました。

一方の飯田サイドがまたリアルな描き方をされていて、なんていうかもう…萌えるんです。
きっかけは後半に明かされる心にポッと火が灯るような出来事で、次は落語、そして角膜(ここ、笑うところかもしれないけど、私は泣けてしまった)、煙草の指…と、こちらもゆっくりと育っていったような気がします。可愛くてしょうがないって思ってるでしょう…?そして弱ってる時に会いたくなってしまってる。136ページからの雨のシーンが堪らないです。両手、塞がっちゃってるじゃん…飯田サン…!!って悶えたわ!

作中のネタは一穂先生が考えられているのですよね。相当なお笑い好きと見えます。
ファン目線かと思いきや、描かれる小峰くんの視点は冷静で俯瞰的な芸人のそれ。顔が良いとお笑いで認められないのか。悔しさを拳の中に握り込んで静かに闘志を燃やす飯田も、自分に足りないプロ意識と向き合い好きを再確認してイップスを乗り越えた青井さんも…真摯に笑いを目指す芸人の矜持を持ったキャラクター達が丁寧に描かれていて愛おしい。

最後の電子限定のおまけ漫画も可愛いです。
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