ステノグラフィカ
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ステノグラフィカ

一穂ミチ/青石ももこ

小説。シリーズ三作目にして作品世界に没入

ネタバレ
2025年5月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 言葉の断片を採集し保存する速記者の碧(ヘキ)と、出来事を言葉に印画する新聞記者の西口。控えめで思慮深い碧と男らしい魅力に溢れながら何処か寂し気な西口とのやり取りが面白くて、静かに盛り上がっていく物語に一気に引き込まれてしまった。言葉を生業とする者たちを、シリーズ一作目から見ていたからか。

新聞社シリーズの第三弾。参考にさせていただいたレビュアーさまのおすすめ通り、本編読んで番外編を読んで。そしていま、ここ。

香港での再会を書いた瑞々しさのある一作目、絡まる三者の生き方に人生のままならさと絆を感じる二作目、愛すべき男のプライドと寂しさを書いたこの三作目と進むことで、シリーズの魅力がグッと上がった。様々な人の言葉をそっと集め心に記録していく碧を通し、触れる西口の魅力にこちらまでもが溺れてしまう。

書き留めなきゃ、と重ねられた手が本能的に動きそうになるシーンが、とても良かった。

男も色々。女も色々。そんな当たり前の中での物語たち。完結したシリーズの、まだ途中を読んでいることがとても幸せ。国会議事堂の見学へ、久しぶりに行ってみたい。小学生の頃より絶対に楽しい気がする…
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