被写界深度
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被写界深度

苑生

久しぶりに読み返しました

ネタバレ
2025年5月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 実写化で話題になっていたので久しぶりに読み返しました。というより、購入したのはかなり前なのだけど上巻の途中まで読んで積読してました。
前回読んだときは早川の紺ちゃんに対する態度に違和感があって途中で読むのをやめたのですが、今回最後までしっかり読んで違和感の原因が少しわかったような気がします。
子供の頃は周囲の状況や他人の気持ちがわからなくて落ち着きのなかった早川。ちょっとADHDのような雰囲気です。それが中学で山下と仲違いして、友人も好きだった音楽も失ってしまった。子供の世界は狭いから全てを失ったような気持ちになっただろう。
そして高校生に時間が飛んで、ヤリ○ンになっている早川。友達が上手く作れないから手っ取り早い関係を求めたのかもしれない。辛い経験をしたから「自分」を出さずに周囲に流されるようになってしまったのかもしれない。紺ちゃんを無理矢理襲ったのも好きじゃないシーンだったけどそれはまぁいいとしても、紺ちゃんに嫌われることを恐れて嘘ついて自分から身を引くっていうのは早川のキャラクター・特性として違和感があるように感じました。
そして下巻では雰囲気がガラッと変わって早川があまりにも「普通」の男の子になっていて「普通」の拗らせ片思いという感じ。子供の頃の早川の“才能はあるけど周りに合わせられなくて浮いちゃう”特性ってどこにいったの?高校の頃の紺ちゃんの言葉でまた音楽に向き合おうと思ったはずだけどバンドについてもちらっとしか出てこないから、早川が今は好きなことに打ち込んだり何かを克服したりできているのかどうかもよくわからなかった。
私としては勝手に「ちょっと変わった子が自分のことを認めてあげられて自分らしくいられてそんな自分を丸ごと好きになってくれる人と出会えた」っていう感じの感動的な展開を期待していたのかも。まぁ自分勝手な期待な訳ですが、予想を裏切る普通の展開になんだかモヤモヤしました。でも、両思いになってからの二人のイチャイチャは友達の延長らしい可愛いおふざけもあり、上巻と切り離して考えればとても好きなシーンでした。
これからの二人がお互いを理解し合う関係となり写真家・ミュージシャンとして成長したり、山下との関係も何らかの進展があったりしたら、また物語に深みも出て感じ方も変わっていくのでしょうか。いったい何様目線かって感じでデカい口叩いてすみません。
星4.4
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