夜明けがいちばん暗い
」のレビュー

夜明けがいちばん暗い

山田ノノノ

「体の一部となった愛しさと痛みと共に…」

ネタバレ
2025年5月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ 個人的にもずっと気になっていたし、島でも強くお勧めされた作品です。

軽い気持ちでホストになって、ビリ続きで掃除ばかりやらされていても、その他何が起こっても基本的にアハハーと笑いながら生きているタカヤ。
単純で素直で可愛くてアホな、こどもみたいなこの子がたまらなく愛おしい。
サイトーさんに好かれたい一心で、見当違いな方向に突き進む姿はアホアホwと思いながらも、姫に潰されているあのカット見た時は一瞬真顔になった。「もっとにょめる」とポロポロ泣いている姿に私まで泣けてきて、「単純で素直で可愛くてアホ」に「健気」が加わり、タカヤ全力で応援しちゃる!となった。

対するサイトーさん。小説書いてる知的でイケメンの彼には、恋人の自◯という辛い過去があった。自◯されると残された人にはどうしたって罪悪感が残ってしまう(らしいね)。止められなかった、気付けなかった、救えなかった。だから自分だけ幸せになるわけにはいかないんだっていう。幸い今のところ私はそういう経験をしたことがないけど、想像すると、絶対そう思ってしまうと思う。想像するだけで辛過ぎるから、当事者のサイトーさんがそう思ってしまうのも無理ない。
それを救い上げてくれたのがタカヤの母だった。もっと言えば母から語られたタカヤの言葉で、つまりタカヤが救ったようなものだ。直後にその言葉の意味を、昔の体験を通して実感することになる。アイスを食べると元気になるというくだりがそれで、アキが既に体の一部になっていたんだと気付き、この時真に救われたんだろうな。だからタカヤに「ありがとう」って言ったのでしょう。

タイトルはタカヤが母に語った内容であり、ラストのサイトーさんのモノローグであり、私が大変感動した言葉であります。
作家様があとがき?の「お礼」に書かれていたことを読んで、そういうことだったのか…とさらにこの作品の奥深さを感じました。
これから生きる指針になりそうな、心から出合えてよかった作品。
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