だんだん街の徳馬と嫁
」のレビュー

だんだん街の徳馬と嫁

藤見よいこ

色々と衝撃が…

ネタバレ
2025年5月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 以前別の漫画サイトさんで無料分があり、途中まで読んだことがあった作品。こちらでも見つけたので、最後まで拝読してみました。
舞台は終戦直後の福岡県、八幡製鉄所で働いている徳馬。兄の義一が戦死してしまい、独りになった兄嫁・万火子(まほこ)と結婚することに…。

戦後、残された者同士が新たに結婚というのは意外と多かったと聞いたことがあります。
兄嫁だった万火子は以前から徳馬の憧れの人。しかし、彼女は死んだ夫を忘れられないでいる。この二人がゆっくりと夫婦になっていく様子を描いた微笑ましい物語…。
というわけではなかったのです。このお話、前半と後半でびっくりするほど印象が違います。
戦死したと思われていた兄・義一。何と彼が復員してきます。そこから雲行きが変わっていき、次第に不穏な空気が漂い始める。そして、まさかの事件が…。
ラストまでの流れは衝撃です。“鉄の街”だからこその展開が待ち受けており、エグい上に切なくて苦しい。元々は誰が悪いわけでもなかったのに…。
と思ったんですが、よくよく考えれば元凶は徳馬なんですよね。なぜなら兵隊になるのを泣いて嫌がった彼の代わりに、義一が出征していたからです。
そんなエピソードが冒頭でサラッと描かれていたのですが…。いやいやちょっと待て。気付かないフリして最後まで読んだのだけど、やはりおかしい。その設定だけはどうしても無理があります。
赤紙が来たら泣こうがわめこうが健康体なら従うしかないし、そもそも身代わりなんてもってのほか。徴兵逃れは処罰の対象で、家族共々誹られる。作者様はそんな当たり前のことをご存知なかったのだろうか。もうそこは完全なるマイナスポイントでした。
ただ、そのおかしな展開に目をつぶって物語全体を俯瞰で見てみると…。徳馬も義一も万火子もみんな、戦争がきっかけで人生を狂わされてるんだよなぁ。やはり戦争は良いことなど一つもない。
始めのうちは完全なハッピーエンドだと思っていただけに、その分余計に心を抉られたお話でした。結末はある意味メリバと言えるかもしれません…。
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