灯台守とかもめの子
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灯台守とかもめの子

吾妻香夜

孤独な灯台守と翼の生えた不思議な子供

ネタバレ
2025年6月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 猫と暮らす小さな島の灯台守•エヴァンは、嵐の夜に灯台まで流されてきた小舟にいた瀕死の小鳥を救けます。カモメの雛らしき小鳥を湯たんぽで温かくしてやり、一晩中灯室で働いたエヴァンは、朝になってそこに背中に羽根の生えた幼児を発見します。食糧配達のシモンしか訪れないエヴァンの孤独な生活に、生魚を食べる翼のある子供が加わります。ルネと名付けた子供はカモメ並みのスピードでぐんぐん育ち、1ヶ月後にはもうティーンエイジャーに成長します。不思議なことにエヴァンもルネの成長にあわせるかのように若返ってゆくのでした。やがてルネの存在が島民にばれ、ルネの世界が広がります。クライマックスである村祭りの棒登り大会は、高い空をバックに映画のように美しく展開され、緊張感を湛えたままさらに盛り上がってゆきます。高い空のシーンに、深い海の底のシーンがフラッシュのように挟まれて今後への期待が昂まりました。あっという間に幼児から青年へと成長するルネの天真爛漫さと無垢な幼さは、名作ラムスプリンガシリーズを彷彿とさせ、作者さまの画力の高さ、物語の力強さが遺憾無く発揮されています。海の安全のために一人黙々と働くエヴァンはどんどん若返り、翼のあるカモメの子はあっという間に青年となって最高の相棒となってゆくだろうファンタジー、次巻は恋愛編となるようです。
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